3D&バーチャルリアリティ展 2011 ──2011.06.22〜24──

東京ビッグサイトで2011年6月22日から3日間にわたって3D&バーチャルリアリティ展が開催された。東京ビッグサイト東ホール全体を使って、機械要素技術展、設計製造ソリューション展、メディカルテクノロジーEXPOとの共催だったが、震災不況を感じさせない盛況振りだった。
Video Journal 8月号に提供した記事を再構成し、会場からのTwitCastingとともにレポートする。
(現地取材:秋山 謙一)

震災不況を感じさせない盛況振り

 6月22〜24日の3日間、東京ビッグサイトで3D&バーチャルリアリティ展が開催された。東京ビッグサイト東ホール全体を使って、機械要素技術展、設計製造ソリューション展、メディカルテクノロジーEXPOとの共催で、3D&バーチャルリアリティ展は東1ホールの4割ほどのスペースだ。従来は、産業用バーチャルリアリティ展として、設計製造・シミュレーション分野で3DCGを活用する産業向けに開催していたイベントだったが、2010年からはステレオスコピック3D(S3D)分野にも拡張。産業用に立体視の活用を提案する場としても利用されるようになってきた。
 東京ビッグサイトで開催された今回の4イベントはそれぞれが産業向けの展示会で、東ホールは通路を可能な限り狭くしているのにもかかわらず、空きスペースが見当たらないほどブースが並ぶという盛況振り。3D&バーチャルリアリティ展も同様で、擦れ違うのも大変なほど、参加者でごった返していた。昨今、入場者が入らない展示会は少なくないが、入場者で溢れ返る展示会も珍しい。
 映画、テレビ番組といったエンターテインメント分野では、制作機器や視聴環境が整って来ているが、S3Dの活用はいっこうに進んでいかない状況が続いている。しかし、設計製造・シミュレーション分野においては、プロダクトの奥行き感を捉えやすいこともあって、好感触。この分野でのS3D活用は進んでいきそうだ。

レッドローバージャパンが電動3Dリグを国内初公開

REDROVER.JPGレッドローバージャパンは、新型の電動3Dリグを国内初出展。コンバージェンスポイントのプリセット機能や、小型堅牢な構造に注目が集まった。 レッドローバージャパンが、2011 NAB SHOWで公開した新製品の電動3Dリグ、4K3Dモニターを国内初公開した。電動3Dリグは、6月14〜17日に韓国で行われた放送機器展KOBAに出展後、日本に輸送。沖縄で通関を済ませ、3D&バーチャルリアリティ展初日である22日朝に羽田経由でそのまま会場入りするという慌ただしさだったそうだ。平行式大型3DリグS-500MAと垂直式3DリグM-500Nの2つの新型3Dリグは、コンバージェンスポイントのプリセット機能を搭載しているため、セッティングにかかる時間が大幅に短縮。会場オープン後、ほどなくしてデモが可能になったようだ。
 ブースでは、新製品の28型4K(3840×2160)解像度S3Dモニターも出展。NAB SHOWと同様に計測技術研究所の協力を得て、4K非圧縮ビデオレコーダーUDR 40S-DVからの出力映像を表示してデモしていた。


TooがAdobe CS5.5を活用したS3D編集環境を提案

Too.JPGAdobe CS5 Production PremiumとCineForm Neo3Dによるステレオスコピック制作環境をデモ。AJA Video Systems KONA3を経由して、リアルタイムでモニタ表示できることをアピールした。 レッドローバージャパンのブースで共同出展したTooは、Adobe CS5.5 Production Premiumを使用したS3D映像制作ソリューションをデモした。当初はFinal Cut Pro環境でのデモを予定していたそうだが、3D&バーチャルリアリティ展前日にFinal Cut Pro XがMac App Storeにてダウンロード販売が開始されたことにより、急遽Adobe CS5.5 Production Premiumによるデモへと変更したそうだ。
 デモは、あらかじめCineForm Neo3Dを使用してS3D用のCineFormコーデックにトランスコードしたファイルを用い、Premiere Pro CS5.5を使用して編集を行うという3SDワークフローを紹介。Premiere Pro上でCineForm Neo3Dに含まれるFirst Lightを用いてCineFormコーデックのアクティブパラメーターを変更することで、レンダリングをすることなくリアルタイムにAJA Video Systems製KONA 3を通して3D対応ディスプレイに結果を出力できることを示した。

クレッセントが3Dインタラクティブ向けタブレットPCを開発中

Crescent_VR.JPGVRシミュレーションにゲーム性を採り入れたデモを「イマーシブ デジタル エンターテイメント」として実施。 クレッセントは、イメージベースシーケンシャルスキャナ4Dviews、Vicon光学反射式モーションキャプチャシステム、インタラクティブ3D視覚化ソフトウェア3DVIA Virtools、高視野・高解像度・高画質HMD(ヘッドマウントディスプレイ)システムを活用したVR(バーチャルリアリティ)システムを今年も出展。「イマーシブ デジタル エンターテイメント」としてデモを行い、モデルガンを使用して3DCGキャラクターを狙い撃つというゲーム性を採り入れたほか、室内から宇宙空間へと移動して浮遊感を体験できるようになっていた。
Crescent_Tablet.JPGクレッセントが現在開発中の3Dインタラクティブ向け専用小型携帯端末のモックアップを初出展。小型ボックス型PCを使用した開発プロトタイプを使用しながら説明を行っていた。 クレッセントが今回の3D&バーチャルリアリティ展に初めて技術参考出展したのは、3Dインタラクティブ向けの専用小型携帯端末だ。メーカー各社が発売するタブレットPCはこれまで、モバイル利用を指向するためにどうしてもグラフィックス性能を犠牲にしてきた面があった。こうしたでタブレットPCでは、高速演算処理、高精細映像のグラフィックス処理が必要なVR分野において、満足のいくレスポンスとパフォーマンスが得られるものは存在しなかったと言ってもいいだろう。
 クレッセントは、海外のPC開発メーカーとともに、オリジナルの3Dインタラクティブ向けタブレットPCを開発。強力な3D描画エンジン搭載することで、インタラクティブマニュアルや3D作業手順書の表示などに最適化し、AR用の小型カメラも実装していることが特長だ。ホットスワップ可能なバッテリーを2個搭載することで長時間の運用も可能にしているほか、手軽な運用を目指してホットキー割当が可能なショートカットボタンも付いている。画面サイズは10.5型で、タッチパネルを採用している。
 この3Dインタラクティブ向け専用小型携帯端末の価格や発売時期については未定とのことだが、今秋に発売できるように開発を進めているという。

(秋山 謙一)

(Video Journal 8月号向け提供記事から再構成)
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