CP+ 2011 ──2011.02.09〜12──

2010年からパシフィコ横浜に開催地を移したカメラ&フォトイメージングショーCP+が、今年も2月9〜12日の4日間開催された。業務用にも活用可能なムービー機能搭載デジタル一眼や民生ビデオカメラが増え、ビデオ機材だけでなくカメラ周辺機材も見れる展示会としても、CP+は注目のイベントだ。
Video Journal 3月5日号に提供した記事から再構成してレポートする。
(現地取材:秋山 謙一)

開催時期を1カ月早めたカメラ&フォトイメージングショーCP+

 2010年からパシフィコ横浜に開催地を移したカメラ&フォトイメージングショーCP+が、今年も2月9〜12日の4日間開催された。ここ1〜2年は、デジタル一眼によるハイビジョン動画に焦点が当たってきたが、今年の会場は次のトレンドに向けて一息ついているという感じだった。しかし初日の水曜日こそ意外にも空いているという印象を受けたが、木曜日以降は、金曜日に悪天候となりつつも最終日の土曜日まで入場者は連日12,000以上となった。最終入場者は4日間で49,368人だった。
 今年のCP+は、デジタル一眼や対応レンズの新製品発表が少なく、話題性に乏しかったことも否めない。従来よりも開催時期が1カ月早まったことも重なって、今年のメーカー各社が投入する春の新製品は間に合わなかった可能性もある。デジタル一眼ムービー系の出展を期待していた映像制作者にとっては、肩透かしだったかもしれない。
 とは言え、CP+は、映像業界的にも注目すべき展示会であることは間違いない。業務用にも活用可能な民生ビデオカメラが増えてきているが、そのビデオカメラが出展される展示会はCP+と秋のCEATEC JAPANという状況だ。ビデオ機材だけではなく、カメラ周辺機材も見たいと思ったら、CP+しかないのだ。今回のCP+でいくつか目についたものについて紹介しておきたい。

キヤノンが業務用カメラXA10を参考展示

Canon.JPGキヤノンは、AVCHDビデオカメラiVIS HF G10とXA10をデモ。写真は業務用機のXA 10。 キヤノンはブースで3月中旬に発売するAVCHDビデオカメラiVIS HF G10をデモした。このデモコーナーにおいて、業務用バージョンのXA10も参考出展。2機種の基本スペックはいずれも、映像処理エンジンにDIGIC DV III、イメージセンサーに1/3型HD CMOS PROを採用し、ワイド端30.4mm(35mm換算)の10倍ズームレンズと8枚絞りを組み合わせている。XA 10は、HF G10をベースに、着脱式ハンドルやXLR入力、ワイヤレスマイクに対応。HF G10のミニアドバンスシュー対応のオプションは使用できないが、着脱式ハンドル上部に標準ホットシューも付いているので、あまり困ることはないだろう。
 HF G10/XA 10で興味深いのは、HDMIストリーム出力だ。これまで発売されて来たビデオカメラは、HDMI出力が出来ても、あくまでもモニタ用の扱いだった。ビューファインダーや液晶パネルに表示される情報も映ってしまい、HDMI出力を記録するといった用途には向いていなかった。しかし、HF G10/XA 10では、ビューファインダーや液晶パネルに各種表示を残しつつ、HDMI出力では情報表示をしないことも選択できるようになっている。従来通り、コンポジット出力やD3対応コンポーネント出力も残されているものの、情報表示のないHDMI出力が可能になったことで、ATOMOS製Ninjaなど外部ファイルベース収録機器での収録もしやすくなった。USTREAMなどのライブ中継においても、コンポジット/コンポーネントではなくHDMIを活用していく可能性を感じさせるものだ。
 HF G10/XA 10は、SDXCカードにも対応したダブルスロットを採用している。残念ながらリレー記録時にはフレーム落ちが発生してしまうようだ。AVCHDは最高画質で録画した時に32GBで3時間近く撮影できるので、リレー記録をするケースは少ないかもしれない。むしろ、業務用上位機種のXF 100/XF 105に採用されたのと同じ、2枚に同時に記録するダブルスロット記録に対応していることが大きなメリットになるだろう。CFカードに比べて小型で薄いSD系カードは、壊したり無くしたりといったトラブルの不安もつきまとう。2枚のカードに同時記録できるようになったことで、安心感は改善されて来た。SDXCカードはまだまだ高価だが、SDHCカードであれば価格もこなれてきているので、複数枚数を扱うことへのためらいも少なくなった。HF G10/XA 10は、まさにマルチパーパスなビデオカメラになりそうだ。
 余談だが、業務用カメラを指すのに型番で示すのだが、「105なんだけど…」と言うと極めて紛らわしい状況になってしまった。パナソニックのマイクロフォーザーズマウントを採用した新メモリーカードカメラレコーダーAG-AF105も「105」なのだ。しかもカメラコーデックも同じAVCHD。これからは「キヤノンの105」「パナの105」と言わないと話が通じないことになってしまいそうだ。

ソニーはスーパー35mmのNXCAMを参考出展

SONY.JPGソニーはEマウント普及に向け、スーパー35mm CMOSセンサー搭載NXCAMを参考出展。 ソニーは、デジタル一眼αシリーズの中級機の次世代コンセプトモデルをスケルトンモデルで参考出展。半透過ミラーを採用したTranslucent Mirror Technologyや新開発のExmor APS HD CMOSセンサーが搭載され、AVCHDコーデックによるフルハイビジョン動画撮影もサポートする。2011年内に発売される予定だ。
 そんなα中級機も注目だが、ソニーはInter BEEで発表したスーパー35mm CMOSセンサー搭載のNXCAMも参考出展しており、注目を集めていた。Inter BEE同様にケースに収められた状態での出展であり、開発動作版の出展ではなかったのが残念だ。NXCAMの隣では、レンズ交換用の「Eマウント」を採用したレンズ交換型HDビデオカメラNEX-VG10のデモが行われていたほか、今後のEマウントに対する製品ロードマップも示した展示も行った。CP+にレンズ交換型のNEX-VG10やNXCAMを登場させるのも、各社のデジタル一眼ムービーをはじめ、マイクロフォーサーズマウントのパナソニックAG-AF105をかなり意識した取り組みだと言える。
 CP+の開催に合わせてソニーは、レンズ交換式マウント「Eマウント」の基本仕様を4月1日から無償開示すると発表。カールツァイス、コシナ、シグマ、タムロンが趣旨に賛同を表明している。今年後半には、各社から新レンズ群が発表されてくるかもしれない。

日本ビクターが4Kビデオカメラを参考出展

JVC.JPG日本ビクターが参考出展した4K2Kカムコーダーと4K2Kハイブリッドカメラ。 日本ビクターは、ブースの一角で新製品の3DハイビジョンムービーGS-TD1をデモした。このGS-TD1のデモコーナーの隣で開発中の4Kカメラを参考出展した。このカメラは現在開発中であり、発売時期や価格、スペックなどは一切公開できないということだったが、3840×2160ピクセルのセンサーを使用しており、画素ずらしによる4K映像ではないと話していた。
 参考出展された筐体は2種類。現行のGY-HM100を流用した印象のデザインの4K2Kカムコーダーと、1920フルハイビジョン60p記録が可能な動画&スチル兼用の新HDハイブリッドカメラGC-PX1を4K対応したデザインの4K2Kハイブリッドカメラだ。今回は、GY-HM100改と言える4Kビデオカメラの筐体で撮影した映像を、カメラ本体から直接ディスプレイに表示していた。
 4Kカメラ自体はいずれも展示ケースに収められ、手で触れることは出来ない状態になっていた。しかし、GY-HM100改の4K2Kカムコーダーは、4K映像をHDMI×4で長時間出力できる段階まで、放熱対策なども含めて開発が進んできていることをうかがわせるものだった。映像コーデックはH.264を使用し、60fps・144Mbpsを実現しているそうで、ディスプレイに表示された映像は細かい髪の毛まで分解する良質なものだった。解像度は1800TV本 以上をうたっていたが、解像度チャートを表示した映像はなく、実際にディスプレイで確認することはできなかった。4K2Kハイブリッドカメラの方は、コンパクトデジタルカメラに望遠レンズを付けたような筐体で、その印象は、ソニーが2001年に発売していたデジタルカメラCyberShot DSC-F707を思い出した。
 2つの4Kカメラは、日本ビクターが開発した次世代ハイスピード・プロセッサーFALCONBRIDを搭載することで実現している。民生用・業務用を問わず共通プラットフォームを実現可能なことが特徴で、GS-TD1の3D機能をはじめ、4Kカメラの映像/高速静止画処理をワンチップで行っている。民生用・業務用を共通化したことで開発のコストメリットが得られ、技術転用や新機能追加もしやすくなった。新製品の登場が楽しみになって来た。

マンフロットがフォト・ムービー雲台を発売予定

Manfrotto.psd新製品のフォト・ムービー雲台MH-055M8-Q5。(フォトサポート製品カタログ2011.1版より) マンフロットが会場で配っていたカタログに掲載されていた新製品にフォト・ムービー雲台MH-055M8-Q5というものがあった。会場に見当たらなかったので聞いてみると、今回の出展には間に合わなかったのだと言う。近日中に発売する予定で、市場価格などは未定とのこと。具体的な日程については、できれば春に、それが無理でも夏までには確実に発売するという状況だそうだ。
 MH-055M8-Q5は写真で見ると小型に見えるが、意外と大きそうだ。マンフロットのプロビデオ雲台で、フルードタイプのエントリー製品に701HDVがあるが、この製品よりも大型。むしろ、ミドルクラスの501HDVと同じか、やや大きめというカテゴリーになるようだ。カタログスペック上は同架重量7kgとあり、501HDVの6kgを越える。カウンターバランス機構も搭載しており、中型ビデオカメラ一式まで対応できそうだ。プロモーション用途で、静止画/ビデオを同時に撮影しなければならないような場合に便利に扱えるだろう。

(秋山 謙一)

(Video Journal 3月5日号向け提供記事から再構成)
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