ビジュアルメディアExpo 2011 ──2011.12.07〜09──

「2011国際画像機器展」「ビジュアルメディアExpo 2011」「光先端テクノロジー展2011」の3つの展示会が12月7〜9日の3日間、パシフィコ横浜で共催された。昨年まで立体EXPOとして開催されていた展示会をビジュアルメディアExpoとして改称、新たに「プロジェクション・マッピングコーナー」を設けた。
Video Journal 1月号に提供した記事を再構成してレポートする。
(現地取材:秋山 謙一)

立体EXPOから改称し、新たにプロジェクションマッピングを追加

投影面の立体感を生かした映像表現手法に注目が集まる

ProjectionMapping.JPG新たに設けられた「プロジェクション・マッピングコーナー」。まずは、プロジェクションマッピングを理解してもらう取り組みだ。3Dtheater.JPGビジュアルメディアExpoと改称しても、最新3D映画のトレーラーなどを上映する「3Dシアター」コーナー設けられていたが……。「2011国際画像機器展」「ビジュアルメディアExpo 2011」「光先端テクノロジー展2011」の3つの展示会が12月7〜9日の3日間、パシフィコ横浜で共催された。3日間の来場者は、17,658人で昨年比3,701人の大幅減。3展示会とも昨年比を下回る来場であったが、ビジュアルメディアEXPO、光先端テクノロジー展については、283人減と130人減に留まった。大きく減らしたのは国際画像機器展で、3,288人減。これは、東日本大震災の影響もあって、開発関連の動きも実際のソリューションビジネスも停滞してしまったことが影響していそうだ。
ビジュアルメディアEXPOは、昨年まで立体EXPOとして開催していたもの。今年から、ステレオスコピック3D(S3D)だけでなく、プロジェクションマッピングなどの映像表現の活用も含めた展示会へと移行した。昨年までと同様に、会場内にS3D映像を紹介する「3Dシアター」を設置し、『怪物くん』や『ALWAYS 三丁目の夕日'64』など最新3D映画のトレーラーなどを上映した。今回新たに設置されたのは、「プロジェクション・マッピングコーナー」だ。プロジェクションマッピングコーナーでは、外から覗ける窓のある暗室を設け、暗室内の壁面や造形物を利用して、プロジェクションマッピングが視覚的に理解できるようにデモしていた。
PM1.JPGプロジェクションマッピングの例。壁に立体物が設置されているのではなく、影も含めて投影することで、視覚的な立体感を得ている。PM2.JPG奥は、コーナーに置かれた白い箱と壁面、床面に対して、1台のプロジェクターでプロジェクションマッピング。箱やコーナーのエッジを強調した画像を投影して、漫画調な印象を演出している。手前は、白い皿と床面に対して投影。皿の模様と、皿が置かれる場所の組み合わせで変わる見栄えの変化を楽しませた。 そもそもプロジェクションマッピングとは何か。これは、スクリーンを用いずに、建築物や構造物、自然物などの立体物に直接映像を投影して、新たな映像バーチャル表現を得る手法だ。例えば、壁面に流した映像を、壁紙が剥がれて下から別の映像が見えてくる演出を加えて作り込んでおくと、単に映像が切り変わるのではなく、実際に壁紙が剥がれ落ちるような感覚を持って楽しむことができる。視聴に3Dメガネなどは必要なく、投影面の立体感を生かしながら視覚的に新たな効果を狙えることが特徴だ。
 今回のビジュアルメディアExpoは、S3D、プロジェクションマッピング、VR(バーチャルリアリティ)とさまざまな映像表現を網羅したものになった。立体EXPOは昨年までで7回を数えたが、特にフルデジタル時代のS3D制作を推し出した昨年、一昨年とは異なり、今回のExpoは出展各社ともテーマを絞りきれてない印象を受けた。展示会の方向性を立体からビジュアルメディアというものに拡大変化させざるをえなかったのは、各社がS3D対応をしてみたものの思うようにS3D市場が拡大していないということの表れではないだろうか。
 現在の3D対応ハイビジョンテレビは家族向けの大型のものを中心に展開されている。家族そろって団らんすることがほとんどない今日のライフスタイルにおいて、3D視聴には個人向けの小型ハイビジョンテレビが不可欠だ。個人利用向けのS3D視聴環境が増えないことも、S3D市場を狭めてしまっているように思えてならない。


クレッセントがカラーグレーディング機器、高速描画小型タブレットPCを紹介

 クレッセントは、12月7〜9日の3日間、パシフィコ横浜で行われたビジュアルメディアExpo 2011に出展し、VR(バーチャルリアリティ)システムやデジタルインターメディエイトデッキMIST、3Dインタラクティブ向け小型タブレット端末Rabbichant2.0を紹介した。
 VRシステムは、高視野・高解像度・高画質HMD(ヘッドマウントディスプレイ)システムとイメージベースシーケンシャルスキャナ4Dviews、Vicon光学反射式モーションキャプチャシステム、インタラクティブ3D視覚化ソフトウェア3DVIA Virtoolsを組み合わせた「イマーシブ デジタル エンターテイメント」。クレッセントは、ゲーム性を採り入れつつ、バーチャル空間上で体験できる没入型エンターテインメントとして3D&バーチャルリアリティ展などでも力を入れて展示しているので、すでにお馴染みのシステムだ。
MIST.JPGデジタルインターメディエイトデッキMIST。REDやARRIの高解像度RAWファイルをリアルタイムに扱えるカラーグレーディングシステムであり、各種コーデックのトランスコードにも対応するマルチユーティリティシステムだ。 映像制作環境として注目したいのは、デジタルインターメディエイトデッキMISTだ。MISTは、Bluefish444製ビデオカードLUST/EPOCHを使用してスイスのMARQUISE TECHNOLOGIESが開発したカラーグレーディングシステムで、欧州では映画制作に活用されている。RED Digital Cinemaの各種カメラやARRIで撮影したRAWデータを読み込んでリアルタイムに現像処理をすることができ、32bitフローティング処理によるカラーコントロールもスムースに行うことができる。ただし、REDCODE RAWを扱うためには、RED製アクセラレーターRED Rocketが必要になる。
 10bit CINEON、8/10/16bit DPX、8/16bit TIFF、8bit TARGA、QuickTime、ProResの各コーデックは標準でサポート。MXF、DNxHD、IMX & MPEG2、IMX & MPEG2HD、AVC Intra、DVCPRO 50/DVCPRO 100、OMFの各コーデックにもオプションで対応できる。コンポジションファイルとしてはEDLやFinal Cut XMLを用いたコンフォームのほか、オプションでAAFのコンフォームにも対応する。MISTは、これらの各コーデックに対応していることを利用して、別コーデックへとトランスコードしたり、SDI出力することも可能になっており、単なるカラーグレーディングシステムではなくファイルトランスコード対応システムとして利用が可能だ。
Rabbichant20.JPG2012年3月に発売予定の3Dインタラクティブ向け小型タブレット端末Rabbichant2.0。3DCGモデルを軽快にレンダリング表示できる。 3Dインタラクティブの活用を提案しているクレッセントは、小型タブレット端末Rabbichant2.0もブースで紹介した。Rabbichant2.0は、クレッセントが企画し、海外のPC開発メーカーとともに共同開発している製品だ。2011年6月の3D&バーチャルリアリティ展に、開発中のマシンとモックアップを初めて技術参考出展。今回のビジュアルメディアExpo2011で初めて、発売前の動作検証モデルを実機展示した。2012年3月に、本体35万円、年間保守料4万円で発売を予定している。
 Rabbichant2.0は、「CGを軽快にレンダリング表示できる小型端末」というコンセプトで開発された。タッチパネルを採用したディスプレイは、サイズ10.5型で、アップルのiPadをひと回り大きくした印象だ。驚くのは高速描画性能で、これまでのタブレットPCでは描画に時間がかかったり動きがギクシャクしたりしていたCGモデルを、スムースに表示することが可能なことだ。ブースでは、本体背面に内蔵の5メガピクセルCMOSカメラを使用してテーブル上のマーカーを読み取り、テーブル面のマーカー位置にCGモデルを合成して表示するデモや、3DCGモデルを見る視点をディスプレイ上の操作でリアルタイムに変更できることをデモしていた。
 インターフェース類に、3つのUSBポートとMini Displayポートを持つ。ネットワークは、ギガビットEthernet、802.11b/g/n無線LAN、Bluetoothに対応する。内蔵メモリは4GB、ディスク容量は32GB SSDだ。こうした高性能な小型端末は、どうしても動作時間が気になるところ。Rabbichant2.0は、2つのバッテリースロットを搭載し、電源を投入したまま片方のバッテリーを取り外せるホットスワップにも対応することで長時間運用に対応している。

(秋山 謙一)

(Video Journal 1月号向け提供記事から再構成)
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