インディゾーンがThe Foundry Update 2011を開催

NUKEなどThe Foundry製品の最新情報を公開

2011.07.15

STORM.JPG秋葉原・UDXシアターで行われたThe Foundry Update 2011。入口スペースのホワイエでは、The FoundryのRAWプロダクション支援ツールSTORMのデモを行っていた。 インディゾーンは7月15日、英The Foundry製品の最新情報を紹介するイベントThe Foundry Update 2011を、東京・秋葉原のUDXシアターで開催した。イベントの冒頭で田中一郎社長は「イベントはNABのUpdateという形を予定していたのですが、東日本大震災の影響で計画停電などもあり、せっかく会場をお借りしても停電するかもしれないなどの問題もありました。The Foundryのスタッフからは震災後すぐに『日本の皆さんは大丈夫ですか』と連絡をいただき、『すぐにでも日本の皆さんの元気な顔が見たい』ということだったのですが、日本の状況が整うまで少し時間をいただきました。The Foundryからも、SIGGRAPHまでには来日したいという強い要望があり、今回のイベントを開催することになりました」とあいさつした。
 The Foundry Update 2011は、前半にThe Foundryの最新情報を紹介し、後半は事例紹介を行う2部構成だった。最新情報の紹介にあたり、The Foundryから地域セールスマネジャーのTom Rockhill(トム・ロックヒル)氏と、クリエイティブ・スペシャリストのNaz Parker(ナズ・パーカー)氏が来日。ビジュアルエフェクト(VFX)&コンポジティングツールNUKE最新バージョン6.3、テクスチャペインティングツールMARIについて解説した。
Nuke.JPGNUKEX 6.3では、3Dパーティクル機能が扱えるようになりビジュアルエフェクトの幅が広がった。 NUKE 6.3ではプリセットやツールセット、ワープツールが改良された。3Dカメラトラッカー、カメラレンズディストーションなどが含まれる上位版のNUKEX 6.3では、3Dパーティクル機能、新Denoise機能、平面トラッカーが追加された。また、NUKEと連携してステレオスコピック3D(S3D)用プラグインOculaを使用することで、左右2台のカメラのコンバージェンスの修正と色調の調整を簡単に行うことが可能になることもデモした。MARIは、ニュージーランドのVFXポストプロダクションのWETA Digitalが開発したペイントツールを引き継いだ製品。CGを使用するシーン制作においては、そこに含まれるオブジェクトがどれだけ拡大されるのかによって、テクスチャを細かく表現する必要も出て来る。MARIのデモでは、操作性を損なうことなく、直感的にディテールを描いていくことが可能になることを示した。
Katana.JPGThe Foundryは開発中のKATANAを初公開。3DCGアニメーションツールに戻ることなく、シーンに合ったルック生成とライティング調整を行える。制作しているものが大規模になるほど効果を発揮しそうだ。 さらに、新製品プレビューとして、The Foundryが現在開発中のツールKATANAを初公開した。KATANAは、アセットベース・ワークフローに配慮しながら、CGアセットのスケーラビリティやフレキシビリティを生かしたまま、3DCGアプリケーションと連携して、シーンのルック生成とライティング調整を簡単に行えるようにするツール。3DCGアプリケーションで行ったモデリング、アニメーション設定、エフェクト設定、カメラ設定を生かしながらも、よりシーンに合ったルック生成とライティング調整をKATANAで行い、RenderManやArnoldなどのレンダラーや出力プロセッサーに書き出すことができる。もともとはソニー・ピクチャーズ・イメージワークスのインハウスツールとして、映画のVFX制作やCGアニメーション向けに開発、RenderMan用に利用されて来たものだが、The Foundryは複数のレンダラーをサポートするなど、より汎用性を持たせたツールとしてブラッシュアップさせている。
 イベント後半は、アイデンティファイの松木晴明社長が登壇。2009年5月23日に公開された映画『インスタント沼』でのCG制作とNukeによるコンポジティングについて、事例紹介を行った。UDXシアター入口スペースのホワイエでは、The FhoundryのRAWプロダクション支援ツールSTORMのデモを行った。デモでは、西華産業が協力。RED ONEの展示をおこなうとともに、REDCODE RAWファイルを用いて、STORMで素材確認やグレーディングが可能なことを示した。現在のSTORM 1.0では、RED DIGITAL CINEMA最新のEPICカメラには対応していないが、今秋無償提供される新バージョン1.1において対応できるようになるという。

 ビジュアルエフェクト(VFX)&コンポジティングのツールといえば、アドビ システムズのAfter Effectsのようにタイムライン上にレイヤーを重ねていくものと、オートデスクのFlameなどのように基本機能を繋いで新たなエフェクトを構築できるノードベースのものがある。CMや映画などハイエンドコンポジティングが必要な制作のポストプロ作業に利用されているのは、やはり自由度の高いノードベースの物が中心になるが、低価格でPC/Macベースでローコストで運用できるツールは少ない。AppleがNothing Realを買収して開発をしてきたShakeは、既に開発も販売も終了してしまっている。このShakeと同様に米ハリウッドのVFX制作現場で開発され、機能が培われてできたツールに、The FoundryのNUKEがある。NUKEは、Digital Domainが社内ツールとして開発したノードベースのVFX&コンポジットツールだ。NUKEはコストパフォーマンスに優れたツールとして、Digital Domainのソフトウェア部門を担当する子会社のD2 Softwareにより2002年から一般販売を開始してきたが、2007年にはThe Foundryが開発と販売を受け継いだ。オートデスクのFlameも以前に比べて低価格化しているが、さらにコストパフォーマンスが得られるコンポジットツールとして、NUKEは要注目の存在と言えるだろう。

(秋山 謙一)

(Video Journal 8月号向け提供記事から再構成)
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