【Inter BEE 2011】ファイルベース新時代の鍵は64bitと4:4:4への対応

ノンリニア編集環境はアビッドとオートデスクに回帰?

 Inter BEE 2011で見られたノンリニア編集環境の動向には、アビッド テクノロジーとオートデスクの編集環境に回帰していくような印象を受けた。
Autodesk.JPGオートデスクブースは、デモが始まると通路も立ち見で埋まるほどの盛況振り。Smoke for Mac OS Xへの関心の高さが分かる。 オートデスクは今回、オールインワン編集フィニッシング環境であるSmoke2012 forMac OS Xのプロモーションに集中してブース出展した。これまでのオートデスクブースと言えば、Smokeとコンポジティング環境のFlameのプロモーションで半々、時には3DCG製品のプロモーションも加えて3分割といった感じだった。今回のようにSmokeだけのプロモーションに集中するというのは、オートデスクとしても初めての取り組みだったようだ。
 Smoke for Mac OS Xは2年前のInter BEE 2009で新たに追加された製品だ。当初から4:4:4に対応している編集システムだったが、ここに来て存在感を増してきている。マーケティング担当の一ノ瀬真一郎氏は「プロダクション関係だけでなく、これまでオートデスク製品を利用したことがなかった会社からの問い合わせも増えている」と話していたが、Web動画や展示会映像など企業内で利用する映像の制作に活用するケースが出て来ているようだ。これも、大判イメージセンサーのカメラレコーダーが、企業でも導入しやすい価格帯に入って来たことと無縁ではないだろう。
 オートデスクブースでは、ポリゴン・ピクチュアズが、Smoke for Mac OS Xを海外テレビ番組シリーズ『TRANSFORMERS PRIME』の制作に使用したワークフロー事例を報告。各シーンの素材を取り込んで、CGでは表現が難しいエフェクトや、CGでは時間のかかる表現を追加するなど、フィニッシング段階でSmokeを活用していたことを紹介した。3DCG製品を3つも抱えるオートデスクだけに、もともとCGアニメーション業界とのつながりは深いが、フルCGアニメーションにおいてもフィニッシング段階でのノンリニア編集利用が進んでいきそうだ。
Avid.JPGアビッド テクノロジーは今年2回目のバージョンアップを行い、Media Composer/Symphony/News Cutter各製品は64bitアプリケーションとなった。サードパーティのI/O製品への対応を増やしたことも特徴だ。 アビッド テクノロジーは、Inter BEEに合わせて、Media Composer/Symphoney/News Cutterの新バージョン6を投入した。アビッドは、4月の2011 NAB SHOWでバージョン5.5を発表していたが、1年で2回目のバージョンアップとなった。近年アビッドは、ユーザー視点での開発に戻して来ていたが、バージョンアップを1年に2回行うのは珍しい。それだけ開発スピードを速めているということでもあろう。
 新バージョン6ソフトウェアは64bitアプリケーションとなったほか、Open I/OとしてAJA Video Systems、Blackmagic Design、Matrox、Bluefish 444、MOTUといったサードパーティ各I/O製品をサポートし、より編集環境を構築しやすくした。AMA(Avid Media Accsess)経由でAVCHDとREDCODE RAWの取り扱いも可能なった。Mac版においては、ProResコーデックの書き出しにも対応した。こうした新機能に加えて、アビッドのメディアコーデックDNxHDシリーズにDNxHD 4:4:4を追加した。
 アビッドはハイエンドコンポジット製品のAvid DSで4:4:4素材の取り扱いをしてきたが、編集製品でも4:4:4対応を果たしたことになる。Media Composerについては、Final Cut Proからの乗り換えなのか、バージョンアップする既存ユーザーも増えて来ているようだ。ノンリニア編集の原点回帰とも言えそうだが、第2世代のノンリニア環境まではアビッドとオートデスクが時代を牽引して来ただけに、新たなファイルベース制作時代を再度牽引して行くことができるか、期待したい。

グラスバレーがMac版EDIUSを2013年に追加予定

GrassValley.JPG4Kに対応したEDIUS 6は、次世代でステレオスコピック3D編集にも対応する。将来は、Mac OS X版の投入も図っていく。 グラスバレーのEDIUSもさらに機能強化されていく。ブースでは4K解像度の編集/プレビューに対応したEDIUS 6を紹介していたが、次世代EDIUS Proに搭載する新機能として、ステレオスコピック3D編集に対応することと、NVision 3Dを活用したフルスクリーンプレビューが可能になることも技術参考展示した。
 これとは別に、EDIUSの将来製品では新たな展開を迎えそうだ。現在のEDIUS製品は、ソフトウェア単体製品のEDIUS 6と、プロフェッショナル向け各種コーデックオプションを利用できるターンキー製品に含まれるEDIUS 6 Broadcastとに分かれている。これらに、エントリー製品であるEDIUS Neoが加わって、EDIUSシリーズを構成して来た。グラスバレーは、EDIUS将来製品において、ソフトウェア単体製品とターンキーに分けることを廃止し、EDIUSとして一本化する方向で検討しているという。さらに、これまではWindows限定のノンリニア編集環境であったが、Mac OS X版の開発も行い、マルチプラットフォーム化を図るそうだ。Mac OS X版は2013年度に発表する予定とのことなので、早ければ1年数カ月後の2013 NAB SHOWで開発最終段階のものが見られるのではないだろうか。
 ただし、EDIUS一本化についてもMac OS X版についても、次世代製品ではなく将来製品での対応ということなので、現在のところどんな製品になるか詳細についてはまだ分からない。唯一の日本製ノンリニア編集ソフトウェアとしての可能性を拡げるものになって欲しい。

(秋山 謙一)

(Video Journal 1月号向け提供記事から再構成)
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