【Inter BEE 2011】ファイルベース制作をサポートするツール群が進化

Blackmagic DesignがDaVinci Resolveの新バージョン8.1を発表

BlackmagicDesign.JPGRAWやLogを扱う大判センサーカメラレコーダーが増え、カラーグレーディングの重要度は増している。Blackmagic DesignはDaVinch ResolveにWindows版を追加。 大判イメージセンサーのカメラレコーダーが出揃ったことで、新たなポジショニングが必要となってきたのがカラーグレーディング分野だ。Inter BEE 2011では、Blackmagic Designが扱うカラーグレーディングシステムDaVinci Resolveの新バージョン8.1が発表となった。新バージョンの投入に合わせて、無償配布されているDaVinci Resolve Liteソフトウェアではカラーコレクションのノード無制限化が行われた。SD/HDプロジェクト限定であることや、GPUカードやRED Rocketカードが1枚に制限されていることについては変更がないが、ノード数に制限がなくなったことで、単なるお試し版ソフトウェアではなくなったと言える。
 さらに、Mac OS X版、Linux版に加えてWindows版も登場して、よりマルチプラットフォーム化が進められた。ハイエンド制作におけるカラーグレーディングは、AutodeskのLusterやQuantelのPubloが思い浮かぶが、Blackmagic Designが2009年に買収したDaVinciもまた定評あるカラーグレーディングシステムだ。Blackmagic Designによって、いよいよ本格的に低価格化と機能向上が図られる段階に入ったとも言え、今後の活用は確実に増えていくだろう。
 これまで、日本の制作ワークフローでは、CGやVFX、コンポジティングといった工程は、フィニッシング段階で行ってきた。そのため、撮影現場にクリエイターが居合わせることはほとんどない。しかし、撮影段階で監督のイメージを把握し、「CGを使った方が楽になる」とか「VFXでは難しいから無理しても撮影した方がいい」とか「こんなルックに仕上げると監督のイメージに近いのか」といったコミュニケーションを図る方が、制作段階で間違った方向に進むということもなくなり、ひいては全体の作業コストも減って、作業進行もスムースになる。しかし残念ながら、こうした効率化は、これまでの撮影、オフライン、オンライン、フィニッシングと順番に進めていくワークフローでは成立しなかった。
 これまでにも転機はあった。AppleがFinal Cut StudioにColorが加えた時も、撮影監督のイメージするルックを現場で確認できることと、最終的にFinal Cut Proで編集した映像のカラーグレーディングをすることをうたっていた。すべてをMacで完結するなら可能ではあったのだが、日本の制作ワークフローの壁は厚かった。既存ワークフローは変わることなく、Final Cut Proだけが活用されているような状況が続いて来た。
 Inter BEE 2011では、大判イメージセンサーのカメラレコーダーが増え、REDCODE RAWやLogといった素材ファイルを扱うようになって来ると、最初にルックを作る作業は必要不可欠になってくる。同時に制作環境においても、Final Cut Studioだけでなく、Adobe SystemsのProduction PremiumやAutodeskのSmoke for Mac OS Xのようにオールインワン環境が増えてきたことで、ワークフローを自由に構築できるようになってきた。ようやくカラーグレーディングの重要度は増し、カラーグレーディング工程をどの段階で利用していくのか、新たなワークフローを検討する時期に来たようだ。

ハイエンド制作で揉まれて汎用化するThe Foundry製品群

Indyzone.jpgThe Foundry User Meetingが、Inter BEE初日夜にお茶の水で開催。The Foundry製品最新情報をデモした。写真はライティングとルック生成向け最新ツールのKATANA。 インディゾーン取り扱いのThe Foundry製品群も要注目だ。The Foundryは、ハリウッド映画の制作に活用されて作り込まれたツールを、開発チームごと部門買収して汎用制作ツールとしてブラッシュアップして投入するという開発姿勢を続けている。Inter BEE 2011開催初日にあたる11月16日の夜に、インディゾーンは東京・お茶の水にあるデジタルハリウッド東京本校でThe Foundryユーザーミーティング2011 in Japanを開催した。昨年に続いて2回目の開催となるユーザーミーティングでは、The Foundryのテクニカルスタッフも来日し、VFXコンポジティングソフトウェアNUKEやテクスチャペインティングソフトウェアMARIなどの各製品最新情報を公開した。
 Digital Domainが開発し、The Foundryが引き継いだNUKEは、2011年7月にバージョン6.3を投入。ディープコンポジティング機能、フル3Dパーティクル機能、新Denoiseノード、平面トラッカーを追加して大規模な機能改善を果たした。2012年はGPUアクセラレーションを実装して高速化などの機能向上を行ったバージョン7を発表する予定だ。NUKEと連携して使用するステレオスコピック3D(S3D)映像補正用プラグインツールの最新バージョンOCULA 3.0は、ステレオソルバーとディスパリティノードを全て書き替え、フォーカスマッチング機能とディスパリティ生成アルゴリズムを新たに搭載したほか、ステレオリタイミング機能を追加した。オーストラリアWeta Digitalで開発され、The Foundryが獲得したMARIは、新バージョン1.4で、ディスプレイスメントのプレビューや、環境反射スフィア、スナップショット、PhotoshopのPSDのサポートなどの機能を追加したほか、カラーマネジメントを一貫して行うオープンカラーI/Oもサポートした。
 The Foundryの最新ツールは、2011年10月末に発表したライティングおよびルック生成用のパイプラインツールKATANA。Sony Picture Imageworksが開発した社内ツールを引き継いでThe Foundryが開発してきたもの。CGデータ処理中のアセット更新や、複数のレンダラーに対するプロパティの提供、大量のCGデータを全部読み出さずに一部分のデータを変更する機能などを持つ。2012年後半には次世代バージョン2が提供される予定だ。
 The Foundry製品は実制作で揉まれて来たツール群であるだけに、制作ワークフローを熟知した機能強化を行っている。日本の小規模な制作ワークフローでは馴染まない部分もあるかもしれないが、ある程度規模の大きい制作には必要なソリューションを提供しており、今後も注目したい。

(秋山 謙一)

(Video Journal 1月号向け提供記事から再構成)
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